#692 美人を待たせている、浪人生。
あなたの浪人生な所が、好き。
パーティーの、続き。
あなたは、30分で失礼しますと、主催者に事前に話していた。
次は、夜の講演がある。
名刺交換を希望する列は、相変わらず、短くならない。
短くならないどころか、さっきより、長くなっている。
それでも、あなたは、「ここまで」と自分から切ることはしない。
このままだと、講演の前の食事時間が、なくなる。
あなたの頭の中では、すでに、食事を諦めているに違いない。
「緊張するー」
並んでいる女性が言った。
「品格の本を、書かれているしね」
気持ちは、わかる。
ただ、あなたは寛大。
「気品をなんとかしないと」と頑張っている人には、優しい。
今できているかどうかは、問わない。
少しでも、気品を身に着けないとと努力している姿を、評価してくれる。
「誘われたら、どうしよう」
そういったのは、美人さんだった。
美人さんは、モテるに違いない。
たぶん、どこにいっても、誘われているに違いない。
「ぜったい、誘われるわよ」
美人さんの隣にいる女性が、肘でつついた。
「私も、まぜてね」
その気持ちも、わからないでもない。
だけど。
小さな勘違いがある。
あなたは、誘わなくても、余っている。
募集していない。
早く帰って、講演をして、夜は、一人で勉強したいと思っている。
あなたは、ほぼ浪人生。
女の子を待たせている浪人生なのね。