#699 雨で、遅刻で。
あなたのジンクスが、好き。
あなたと、初めてのデート。
朝早く、目が覚める。
むしろ、寝れないというほうが、正しい。
もう、起きちゃおう。
でも、睡眠不足で、頭が回らなくて、気の利いた会話ができなかったら、どうしよう。
寝不足の顔も、納得がいかない。
家を出ると、雨が、降ってきた。
タクシーが、なかなか捕まらない。
いつもは、空車だらけなのに。
こんな日に限って。
朝早く目が覚めたのは、この予感があったからかな。
やっと、乗れた。
今度は、渋滞。
いつもは、すいすいの道が、こんな手前から、渋滞なんて。
降りて、歩くか。
雨も降っているし。
うそ、すでに、約束の時間が過ぎている。
あんなに余裕があったのに。
あなたに、「少し、遅れます。ごめんさない」のメールを入れる。
余裕があれば、歩いたけど、遅れている状況で歩いていたら、ますます遅くなる。
降りた。
降りた途端、タクシーは見事に流れた。
急ぐ。
場所はわかっている、つもりだった。
そこは、想像していた場所ではなかった。
焦れば焦るほど、裏目に出る。
思っていた所になかったことで、ますます、動転。
ワンブロックを、ぐるぐる回る。
やっと着いた時、あなたはニコニコしていた。
「最初のデートで、どちらかが遅れてくると、一生つきあうことになるよ」
うれしかった。
「もう一つの説があってね。最初のデートが、雨になったら、一生つきあうことになる。ダブルだね」
私は、まだ傘を持ったまま、笑った。