#700 腕枕の時の声で。
あなたの腕枕の声が、好き。
あなたとレストラン。
外はまだ明るい。
短縮営業で、晩御飯の時間が、早くなった。
「うちは、夜はスナックをしていたから、19時開店までに、晩御飯は、18時。お風呂屋さんに行くのが、17時だったから。早い晩御飯は、子どもの頃を思い出して、いいね」
あなたは、笑っている。
テーブルには、衝立シールドが、置かれている。
なんとなく、息苦しい。
シールド越しでも、あなたの笑顔は、変わらない。
シールドがあるせいで、隣のテーブルの人の声が、こころなし大きい。
声が、大きくなる気持ちも、わかる。
大きくはらないと、シールドを超えないような気がする。
シールドの横から、話している人もいる。
ドラマの刑務所の面会室を思い浮かべた。
私が、万が一、入ることになったら、あなたに来てほしい。
あなたが、入ったら、もちろん、来ます。
思い浮かべた。
あなたは、刑務所の面会室でも、今と同じように、笑ってくれるに違いない。
あなたは、シールドがあっても、いつもどおり。
まったく、シールドを感じさせない。
マスクをしている時でも、笑っているのがわかる。
全く変わらないのは、声。
シールドがあっても、マスクをしていても、あなたの声は、変わらない。
特にはる気配もない。
耳元で、聴こえる。
ベッドで、腕枕をしてもらっている時の声だ。
腕枕の時だけじゃない。
外にいる時でも、あなたの声は、腕枕の時の声。
シールドと、マスクで、みんなの声が聴こえにくくなったおかげで、あなたの声がますます、私の耳の中を、くすぐる。