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#701 膝の上で、坐禅。

 あなたの膝の上が、好き。
 あなたと、坐禅に行った。
 坐禅は、初めてだった。
 緊張した。
 パチリと、叩かれたら、どうしようとドキドキした。
 むしろ、パチリと、闘魂注入してもらいたい感じもした。
 ご住職は、優しかった。
 緊張していることも、全部お見通しだった。
 お見通しだと思うと、楽になった。
 簡単な、説明で始まった。
 あまりの簡単さに、「もう、始まるの」という感じだった。
 座学が、もう少しあると思いこんでいた。
 考え方的なことは、むしろ、何もなかった。
「黙って座る」ということは、「何も聞かずに、始める」ということだった。
 なによりも安心なのは、あなたと一緒ということだった。
 私一人だったら、到底堪えられなかった。
 修行僧ではなく、初心者の場合は、パチリは、自分から合掌することで、してもらえる仕組みだった。
 目の前を、警策を持ったご住職が、ゆっくりまわる。
 あなたが、パチリとしてもらうのを、こっそり見て、マネをしよう。
 目は、閉じなくていい。
 あなたを、薄目で見る。
 なんと。
 坐禅用の座布団に、坐った瞬間から、もうあなたは、根が生えたように、坐っていた。
 アディダスのジャージを来ていなかったら、お坊さんに見える。
 まるで、植物のように、そこにいた。
 リラックスしている。
 リラックスを味わっている。
 速い。
 私は、あなたの膝の上に乗るイメージで、感覚を思い出した。
 すると、体が、急に軽くなった。
 ご住職が、目の前に来るのも、わかった。
 でも、もうパチリは、要らなかった。
 あなたの膝の上の感覚を、味わっていたかったから。



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