#703 紙の中から、救い出す。
あなたの女性の描き方が好き。
あなたが、女性画を描いている。
絵は、お父さんに習ったらしい。
「好きなものを、描けばいい」
と、いうのが、お父さんの教え。
だから、あなたは女性の絵を描いている。
あなたが女好きというのとは、少し違う。
あなたは、女性に絵を描いてあげるのが、好きなのだ。
女好きならば、絵を描く前に、抱いてしまう。
または、抱くために、絵を描く。
でも、あなたは違う。
絵を描くことが、愛することと同じ意味なのだ。
あなたに描かれる女性は、あなたに愛されている。
だから、幸せそうだ。
だから、感じている。
あなたは、描きながら、愛している。
描かれる女性は、描かれながら、愛されている。
あなたは、女性を見ながら描かない。
あなたは、どこかを見ながら、ただ描いていく。
白い紙に、埋もれた女性を掘り出していく感じ。
女性の絵を描いている時のあなたは、優しい顔をしている。
あなたは、白い紙の中から、優しく女性を救い出す。
掘り出すまでは、誰だかわからない。
あなたも、わからないという。
あなたの頭の中にある理想の女性なのか。
あなたが出会った思い出の女性なのか。
それらが、入り混じったものなのか。
美人であることは、間違いない。
あなたの好みであることは、間違いない。
似顔絵ではない。
一枚の絵が、出来上がった。
最初に見れる幸せを、私は感じる。
あなたが、紙の中から救い出した女性に、微笑みかける。
絵の中の女性が、はにかむ。
見たことがない女性。
翌日、スタバで、女性が忘れた文庫本にあなたは気づいた。
「忘れてるよ」
振り返った女性は、昨夜、あなたが描いた女性だった。