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#725 食べると、味わうの違い。

あなたのカレーの味わい方が好き。
あなたとコーヒー専門店。
こんな所に、コーヒー専門店があるとは、気づかなった。
ジブリアニメのような蔦の扉が表れた。
何度も通っている道なのに、気づかなかった。
扉を開けると、香ばしい香りが漂ってきた。
香りで、別世界に招かれた。
窓際の席に座る。
ここは、元は建築家の自宅だった。
広い窓から、洋風の築山が見える。
袖に蚊が止まった。
心地よい風が吹いてきた。
窓が、開いていた。
クーラーのために締め切っているお店が多い中、新鮮だった。
あっ、カレーセットがある。
コーヒー専門店では、珍しい。
気になる。
「カレーセット、2つ。食後にコーヒーでお願いします」
私に何も聞かずに、あなたが気づいて、頼んでくれた。
サラダが出る。
そして、カレーが出た。
想像していたより、早かった。
美味しい。
あなたを、見た。
あなたは、カレーを一口、口に含むと、窓の外の景色を見ていた。
美味しそうだった。
同じものを食べているのに、あなたのほうが、美味しそうだった。
あなたのカレーを食べさせて、って言いたいくらい。
あなたは、ワンスプーンのカレーを、味わっていた。
私は、食べただけだった。
味わうと、食べるの違いを見せつけられた。
あなたは、カレースプーンを、お皿に置いていた。
私は、カレースプーンを握りしめて、二口目をすでに載せていた。
あなたは、まるで、お茶室で、お茶を味わっているみたいだった。
あなたを通して、あなたの味わったカレーの味が、私の口の中に、染み込んできた。



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