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#728 映画の中に、溶け込んで。

あなたの溶け込み方が、好き。
あなたとディナーの待ち合わせ。
あなたを待つのも、楽しい。
待っているあなたに会うのも、楽しい。
エレベーターが開いて、レストランに着いた。
レセプニストが、にっこり微笑む
予約のあなたの名前を言う前に、アイコンタクトで、案内された。
何も言わなくても、あなたの同伴者であることが伝わって、安心した。
うれしかった。
案内されたのは、ウエイティング・バーだった。
カウンターと、ソファー席。
映画の中に出てくるような内装。
あなたは、まだ来ていなかった。
窓から、外の景色が見える。
窓からの景色も、映画のように見える。
スツールと、ソファー、どちらに座ろうか、迷った。
どっちも、座りたかった。
あなただったら。
あらっ?
気配を、感じた。
振り返ると、お店の奥のカウンターに、あなたは立っていた。
今、来たんじゃない。
さっきから、あなたは、立っていた。
私は、あなたのスツールの座り方が好き。
きっと、スツールに座っていると思って、油断した。
あなたは、スツールでもなく、ソファーでもなく、カウンターの傍らに立っていた。
気づかなかったのは、インテリアに、溶け込んでいたから。
映画の中に、あなたは入り込んでいた。
レセプションの女性が、微笑んでいたのも、あなたが、あまりにインテリアに溶け込んでいたからだった。
ただ立っているだけなのに、おしゃれなインテリアに溶け込む。
その映画の世界の中に、私も入りたい。



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