#731 すぐそばにある、もう一つの世界。
あなたの両親の話が、好き。
あなたは、よく両親の話をしてくれる。
両親の話をする時、あなたは、幸せそうな顔をしている。
小学4年生の顔になる。
最近、ますます、あなたの顔が、小学生の顔になってきている気がする。
あなたの小学4年生の顔を見たことがあるわけではないのに。
きっと、こんな小学4年生だったに違いないと、わかる。
あなたが、両親の話をする時、不思議な事がある。
どんな昔の話でも、すべて、現在形で話す。
あたかも、昨日のことのように、話す。
そういえば。
おじいさんやおばあさんの話も、よくしてくれる。
おじいさんやおばあさんの話ですら、現在形で話してくれる。
昨日の話どころか、ついさっきあったことのように、話してくれる。
あなたが、家族を愛しているのが、よくわかる。
あなたが、家族に愛されて育ったというのが、よくわかる。
あなたにとって、家族は、いつもそばにいる。
目の前にいる人のエピソードを語るように、話してくれる。
私の家族の話も、楽しそうに、聞いてくれる。
自分の家族の話を、あなたに聞いてもらうのが、好き。
喧嘩した話ですら、あなたにニコニコ聞いてもらうと、楽しい話に変わってしまう。
あなたには、あの世も、この世も、ない。
あの世は、死者の世界ではない。
もうひとつの世界。
遠い世界でもない。
カーテンの裏と表くらいの差でしかない。
あなたは、もう一つの世界を、垣間見せてくれる。
もう一つの世界が、遠い世界ではなく、死者の世界でないことも、教えてくれる。
あなたと話していると、両親のことを、次々と、思い出してくる。
あっ。
また一つ、幸せなことを、思い出した。
あなたが、すぐそばにいることに、気づかせてくれた。