#732 遠くから、歌声が聴こえてくる。
あなたの歌声が、好き。
あなたの声は、不思議。
高いのか、低いのか、わからない。
声が高くて、響きが低い。
何気なしに聴く人は、あなたは声が低い人だと感じる。
でも、よく聴くと、あなたの声が、高いことに気づかされる。
あなたが歌うのを、初めて聴いた時。
驚いた。
別人に、感じた。
でも、あなたの声だった。
高かった。
その高さは、ふだん、話している声だった。
歌う時だけ、高くしているわけではなかった。
あなたは、ふだんから、こんなに高い声で話していた。
低音の響きが、高さと調和していた。
あなたが、君が代を、歌ってくれた。
今まで聴いた君が代ではなかった。
学校時代から、何度も聴いたはずの君が代ではなかった。
不思議な曲だった。
君が代と言われなければ、気づかないくらいだった。
この世のものではない、感じだった。
天から、何かが降りてくる感じだった。
かといって、賛美歌でもなかった。
雅楽だった。
あなたの君が代を聴いて、やっぱり雅楽なんだなと気づかされた。
なんだか、ムズムズしている感覚が、湧いてきた。
あなたも、同じ感覚だった。
どっかで、聴いたことがある気もした。
『もののけ姫』だった。
あなたの君が代に、森を感じた。
山を感じた。
あなたが歌っているのに、どこか遠くから聴こえてくる感じだった。
私の前髪が、風が横切った。
どこかから、風が吹いてきた。
部屋の中にいるのに。