#737 幸せになる、ベンチ。
あなたの隣が、好き。
あなたと、公園。
「幸せになるベンチ」と書かれたベンチを、見つけた。
素敵なネーミング。
考えた人は、偉い。
こういう時、あなたは、何も言わず、座る。
隣に、座った。
「幸せになるベンチ」と書かれているだけで、うれしい。
おまじないだと、思った。
あなたは。
背もたれに、もたれていた。
私も、もたれた。
背もたれは、思ったより、深かった。
ベンチの背もたれって、意外に、倒れていることに気づいた。
空が見えた。
空が、青かった。
雲の白さが、青さを引き立たせていた。
鳥が、飛んでいた。
飛行機が、小さく飛んでいるのが、見えた。
こんなところを、飛行機が飛んでいる。
今まで、気づかなかった。
木の香りがした。
背もたれで、胸が広がって、自動的に深呼吸するかたちになった。
白い雲の中を、二羽の鳥が飛んでいた。
私は、笑っていた。
鎖骨が、パキパキ言いながら、広がっていった。
たしかに。
幸せになるベンチだった。
ふだん、うつむいていて、空を見上げることがなかった。
「幸せになるベンチ」は、空を見上げさせてくれた。
あなたも、微笑んでいた。
幸せになったのは、あなたから、幸せが伝染したにちがいない。
雲の中の、二羽の鳥を見ていた。