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#743 スパイ映画のように。

あなたのスパイ映画みたいな移動が、好き。
あなたと、水族館。
予定にない展開。
タクシーは、運転手さんのすすめで、裏口に着いた。
裏口には、館内の案内図は見当たらなかった。
あなたは、ぐんぐん歩いていく。
駐車場から登った所に、円形のスタンドの裏側が見える。
水の音がする。
その後に合わせて、歓声が聴こえる。
「やっぱり、イルカは、人気があるな」
お父さんと女の子が、走っていく。
この所、クローズになっていたレストランが、珍しく開業している。
その向こうに、小さな屋根が見える。
水族館は、海浜庭園と隣接していた。
あなたは、階段を、ずんずん上がっていく。
階段の先に、何があるか、見通せない。
曲がりくねった階段の先に、正面玄関が現れた。
なんと、行列だった。
「先に、並んでてて」
そう言うと、あなたは、チケット売り場の方に行った。
こういう分業が、好き。
スパイ映画で、よくある。
いちいち説明はない。
あうんの呼吸で、自分の役割を把握しなければならない。
「どこいくの」「どうすればいいの」
なんていうセリフは、スパイ映画にはない。
それが、気持ちいい。
列の進み具合は、意外に早かった。
まもなく、私達の番という時に、あなたはチケットを買って、戻ってきた。
何事もなく、中へ。
もうこれだけで、冒険。
あなたといると、水族館に入るだけで、007映画を見ているような気分になれる。
スパイ映画に、遊園地のシーンは、よく出てくる。
敵を追いかけるカップルのように、私達は、水族館の中を、進んでいく。
どこかに。



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