#744 指示なしで、エンターテイメント。
あなたの指示なしの行動が、好き。
あなたと、水族館の中を、移動中。
スパイのように。
驚いた。
想像以上に、水族館は、賑わっていた。
こんなに熱気に溢れていると、思わなかった。
もっと、ひっそりとしていると、思っていた。
ごめんなさいという気分だった。
そんな水族館の中を、あなたは、ラグビー選手のように、すり抜けていく。
私は、あなたが開いたルートを、吸い込まれるように、ついていく。
お魚は、見ないの。
あなたは、敵を追いかけていた。
あなたは、スパイ。
のんびり魚を見ている場合ではない。
あなたは、一目散に、あるところを目指していた。
細い階段を上がると、視界が一気に広がった。
イルカのプールだった。
すごい熱気だった。
歓声が上がった。
すでに、イルカが泳いでいた。
飼育員さんの姿は、ない。
ショーは、まだ始まっていなかった。
席は、すでにびっしり埋まっていた。
あなたは、ひょいひょいと人の間をすり抜けながら、一段高くなっているとこに、立った。
私の立つスペースも、見つけてくれた。
見やすい。
「まもなく開演します」というアナウンスが、流れた。
あなたは。
飼育員さんなしに、自分の意思で泳いでいるイルカに、見とれていた。
イルカは、自らステージに上り、手を振り、観客を沸かせていた。
イルカは、飼育員さんの指示で動いていると思っていた。
そうではなかった。
イルカは、自分の意思で、観客を楽しませていた。
真剣に見つめるあなた。
あなたは、飼育員さんの指示なしで、観客を沸かせるイルカだった。