#746 王子が、ひとりひとりに。
あなたの挨拶の仕方が好き。
あなたが、魔法の扉を、入っていく。
ブランドショップのスタッフが、大勢いた。
さすが、ブランドショップのスタッフは、みんなカッコイイ。
そのブランドを着ているからではなくて、立ち居振る舞いに、気品がある。
そこで働く人の誇りが、品のある立ち居振る舞いになっている。
スタッフの女性が、あなたに挨拶をする。
会釈ではない。
声を出して、挨拶をする。
しかも、一人ではない。
レストランに向かうエレベーターに向かうまでに、6人のスタッフがいた。
その全員が、あなたに挨拶をした。
あなたが、あなただから。
そうではなかった。
挨拶を先にしているのは、あなただった。
あなたが、一人一人のスタッフに、挨拶をしていた。
背中を向けて、別の作業をしているスタッフにも、挨拶をした。
お城に戻った王子に、お城のスタッフが挨拶をしているのだと思っていた。
違った。
王子が、スタッフに、話しかけているのだった。
そのブランドショップは、世界的ファッション・デザイナーが作ったブランドだった。
スタッフの人達は、まるでそのファッション・デザイナーに挨拶するように、あなたに挨拶をした。
最上階の、レストランに着いた。
ここでも、あなたは、ひとりひとりのスタッフに話しかけていた。
まるで、自分のお店だった。
「化粧室も、おしゃれだから、見てくるといいよ」
早くから、ウロウロしていた私が、化粧室に行くチャンスを与えてくれた。
化粧室も、デザイナーの美学があふれていた。
席に戻ると、あなたがいなかった。
あなたも、化粧室かな。
ふと見ると、バーカウンターの所のスタッフと、あなたが話していた。
あんな離れたところなのに。
あなたが、自分から、わざわざ行ったに、違いなかった。