#749 あなたの唇に、吸い寄せられて。
あなたの紅茶の飲み方が、好き。
あなたと、ティーサロン。
あなたは、紅茶が似合う。
ハンドルに、指を通さない。
真似をすると、落としそうになる。
あなたが持つと、軽々と、ティーカップが浮かぶ。
浮いているカップを、抑えているだけのように、見える。
ティーを飲む時、あなたの頭は動かない。
カップに、迎えに行くことはない。
カップは、胸の前から、あなたの唇に近づいていく。
あなたの腕は、水平。
私の上は、カップを落とさないように、垂直に下がっていた。
あなたの腕は、ボールルームダンスの時と同じように、水平。
そう。
あなたは、ティーカップと、ダンスを踊っている。
あなたが、ポットで、お替りを注いでくれる時も。
ティーポットは、あなたの胸の前にある。
そして、私のポットに、注がれる。
この瞬間が。
なんとも言えず、セクシー。
ティーの甘い香りが、立ち上がる。
ティーから立ち上がっているのか、私から立ち上がっているのか、わからなくなる。
勢いよく注いでいるのに、はねない。
素早いのに、エレガント。
あなたの肘は、風船で釣られたように、高い所にある。
「先生の『エルボーアップ』という言い方が、好きだった」
と、あなたが、笑っていた。
あなたは、2つ前の過去世が、イギリス人だったという。
「歳を取ると、どんどん過去世の影響が強く出てきます」
と、霊能者の人に言われていた。
その通りになっている。
私は、ティーカップ。
あなたの唇に、吸い寄せられていく。