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#751 背中に、蝶ネクタイ。

 あなたのコートのベルトの結び方が、好き。
 あなたと、晩秋の公園を散歩。
 お気に入りのトレンチコートを着た。
 今年も、このトレンチコートを着る季節が来た。
 トレンチコートを着れる季節も、意外に少ない。
 あなたとの晩秋のお散歩には、トレンチコートがいい。
 あなたも、トレンチコート。
 あなたのトレンチコートの後ろ姿が、オシャレだった。
 トレンチコートは、後ろが勝負。
 何かが、違う。
 ベルトの結び方が、オシャレだった。
 ベルトは、前で結ぶのは、まだ簡単。
 前で結ばない時が、難しい。
 後ろで結ぼうとすると、どうしてもベルトが余ってしまう。
 とりあえず、余った部分をポケットに押し込む形になる。
 いつのいまにか、ベルトがよれよれになってしまう。
「背中を、見せてごらん」
 あなたに背中を向けた。
「たとえば……」
 あなたが、背中でなにかしている。
 幸せな気分だった。
 背中で、何をしているのか、わからない。
 あなたに、身を委ねる。
 ベルトの衣擦れの音がする。
 セクシーだった。
 脱がしてもらっているより、感じた。
 場所は、公園。
 空が、青い。
 仲良しの雲が、2つ並んでいる。
 あの雲は、あなたと私。
「これが、かわいいね」
 見たい。
 蝶ネクタイの羽根のようなものが見えた。
 ようなものではなくて、まさしく、蝶ネクタイが背中にあるのを見たのは、レストランに入ってからだった。



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