#761 ダンボール箱が、感じてる。
あなたのダンボール箱の開け方が、好き。
キッチンで、いただいたお歳暮の整理をしていた。
ダンボール箱は、なかなか大変。
乾燥していると、手を切りそうになる。
ガムテープが、端までピッタリ貼られている。
それはそれで、丁寧なんだけど、剥がすのが大変。
せっかくのネイルが、剥がれそうで、ドキドキする。
テープが、かかったもの。
巨大なホッチキスで、閉じられているもの。
日本中で、今、この瞬間に、ダンボール箱と、格闘している女性が、何人いるだろうか。
開けたダンボール箱。
開けかけのダンボール箱。
開けるのを忘れているダンボール箱。
キッチンが、ダンボール箱に、占領されていく。
特に、このダンボール箱は、固い。
気がつくと。
抱きかかえていたダンボール箱が、なくなっていた。
あなたが、代わりに、開けてくれていた。
ふりかえると。
さっきまで、山積みになっていたダンボール箱が、見事に平らになっている。
あなたの手にかかると、どんなに固いダンボール箱も、簡単に、開いていく。
まるで、自分から、あなたに開けてもらっているように。
深窓の令嬢が、自らドレスを脱いでいくかのように。
あなたは、ダンスを踊るように、ダンボール箱を開いていく。
作業をしているというよりは、パフォーマンスをしているかのよう。
スピーディーで、エレガント。
もはや、ダンボール・パフォーマンスを見ているみたい。
「子どもの頃、家にダンボール箱がたくさんあって、遊び道具だったからね」
あなたは、ダンボール箱を開けているのではなかった。
ダンボール箱で、遊んでいる子どもに戻っていた。
ダンボール箱の開け方が、優しい。
ダンボール箱が、喜んでいた。