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#767 暗闇の中で、微笑んで。

あなたの暗闇の中での微笑みが、好き。
あなたと、暗闇の階段を上がって、宇宙の2階へ来た。
宇宙の2階という自分の表現に、笑ってしまった。
さっきまでは、階段だったけど、今は、水平に歩いている。
宇宙に、水平という概念があるかどうかは、謎だけど。
暗闇を、見るギャラリーかもしれない。
ふだん、暗闇を見ることはない。
どんな真夜中でも、光がある。
どんな山の奥でも、星の光がある。
家の中で、停電になっても、何かが光っている。
ここまで暗くするには、自然というより、人工的に、暗くしないとできないはず。
暗闇を、知っているはずだけど、久しぶりに見た。
前に見たのは、生まれる前だったかもしれない。
転んだり、ぶつかったりすることはないのか心配になった。
見張りの学芸員さんの気配を、感じた。
暗闇の中では、気配に敏感になる。
学芸員さんは、この闇の中で、どれくらいいるのだろうか。
慣れてくると、すいすい歩けるようになるのかもしれない。
あなたの手が、私をリードしてくれる。
暗闇の中に、もっと暗い入口があった。
不思議。
何も見えない暗闇なのに、そこにもっと暗い入り口があることが、わかる。
今いるところが、一番暗い暗闇だと思っていたのに。
あなたが、そのひときわ暗い中に、入っていく。
あなたの手が、そこに段差があることを、教えてくれた。
ひときわ暗い小部屋であることが、気配でわかった。
壁は見えないけれど、さっきまでいた部屋よりは、小さい空間。
暗闇の中で、私は、見ることを放棄した。
暗闇を、ぼんやり眺めていた。
どこを見ていいか、わからないから。
眺めるしか、なかった。
今まで、必死で、見ていた。
暗闇を眺めることで、いろんな風景が、浮かんできた。
暗闇の中でしか、見えない風景があった。
暗闇の中で、あなたが、微笑んでいるのが、はっきり見えた。



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