#768 言葉よりも、気持ちを。
あなたの会話が、好き。
「帽子を、買いに行くけど、一緒に行く?」
と、あなたに聞かれた。
帽子。
帽子は、自信なかった。
関心がないわけではなかった。
むしろ、関心は、かなりあった。
帽子が、かぶれる女性に憧れていた。
帽子は、ファッションの中で、究極。
だからこそ。
自信が、なかった。
今の自分に、かぶれるか。
映画の中に出てくる女性は、帽子をかぶっている。
1920年代のパリ。
大正時代の銀座。
高畠華宵の絵に出てくる女性。
果たして、自分に帽子が、かぶれるか。
「帽子は、自信ないの」
あなたの言葉と、すれ違っていた。
あなたは「一緒に、行く?」と聞いたのだ。
答えは「一緒に行くか、行かない」しかない。
「買ってあげる」とも「買ったら」とも言っていない。
心の中の独り言の会議の後、結論として出た答えを、言葉にしてしまった。
あなたは、言った。
「一緒に見て、選んで」
優しい。
「関心がなければ、僕一人で行く」とは言わない。
関心がないというふうにとられてもおかしくない返事をしているのに、切り捨てない。
あなたは、気づいている。
私が、人一倍、帽子に関心があることに気づいていて、クヨクヨしていることに、気づいてくれている。
あなたは、言葉より、気持ちを聞いてくれる。