#774 そろそろ、と言わない。
あなたの永遠が、好き。
あなたと、お庭を歩く。
ベンチがあった。
座ってくださいというばかりのベンチだった。
そんな時。
あなたは、いつも座ってくれる。
私は、何も言っていないのに。
あなたも、その椅子に、誘われたのか。
私の気持ちを、汲み取ってくれたのか。
それとも。
「座ってください」
という椅子の声は、私にではなく、あなたにだったのか。
ひょっとしたら、椅子の彼女は、
「えっ、あなたも座るの」
と、驚いているかもしれない。
でも、そんな気配はなかった。
「ご一緒に、どうぞ」
と、いう気配だった。
疲れたから、座ったのではなかった。
前に、一人で、ここに来たことがあった。
前には、なかった。
気づかなかっただけか。
新しく置かれたわけではない。
椅子は、座ってほしい人の時だけ現れて、座ってほしくない人の時は、隠れるのかもしれない。
心地いい。
雪も残っているのに、あたたかい。
ここだけ、陽があたっている。
寒くて、温かいのが、気持ちいい。
いつまでも、座っていることができる。
椅子が、まるでヒーターが入っているように、暖かく感じた。
陽があたっていたせいだろうか。
ずっと、座っていた。
あなたと、一緒に。
あなたは、永遠に、「そろそろ」と言わない。
あなたと味わう、永遠。