» page top

#775 運命の瞬間の会話。

あなたの運命の瞬間の会話が、好き。
あなたと、奈良のホテルで食事。
奈良初めてのラグジュアリー外資系ホテル。
しかも、そのホテルブランドの最高ランクのホテル。
食事を終えて、マネージャーさんに、館内を案内してもらう。
スイートを、見せてもらう。
通常は、景色を自慢する。
ここは、景色を自慢しないところが、むしろ凄い。
「市役所ビューです」
そこに、景色以上の自信を感じた。
京都とも違う。
大阪や、神戸とも違う。
控えた美が、ここにある。
ロビーに戻って、タクシーを呼んでもらう。
奈良は、タクシーが少ない。
ホテルの前に、タクシーがいるわけでもない。
ハイランクのホテルでも、ターミナル駅からタクシーが来るまでに、時間を要する。
「すみません」
と、マネージャーさんが謝る。
タクシーが来るまで、ロビーのアート作品を味わう。
切り花が、ひとつもない。
地域に根ざすことをコンセプトにしているので、切り花がない。
盆栽のインスタレーションは、鉢無しで、根を見せている。
牡鹿と大宇陀の山々の景観に挟まれる。
ふと気づくと、あなたがマネージャーさんと、話している。
話し声は、聴こえない。
かなり、深い話であることは、わかる。
初対面と言っていた。
質問と答えというやり取りではない。
お互いが、人生の一期一会の会話をしている。
そうか。
タクシーは、なかなか来ないのではない。
来ないように、していた。
マネージャーさんが、話すための時間を、作った。
タクシーが来るまでの10分間に、これまでの人生と、これからの人生を凝縮していた。



【中谷先生のおすすめ電子書籍TOP3】 紹介記事はこちらからどうぞ