#777 コートを、脱がせながら。
あなたのコートの脱がせ方が、好き。
あなたと、お部屋に入った。
あなたが、コートを、脱がせてくれる。
魔法のように、コートが、あなたに受け取られる。
コートが、軽く感じる。
自分の着ていたコートが、高級に感じる。
コートを、脱がされながら、くるりと回転している。
あなたが、コートを預かる仕草をしてくれる。
まるで、魔法にかかったように、体が回転し始める。
回転しながら、気がつくと、コートが体から、離れていっている。
ヴィーナスのように、裸にされたような快感がある。
せっかく脱いだのに、もう一回、逃せてほしいと思う。
冬にしか味わうことができない快感。
反時計回りに、一周する。
右手が先に脱がされて。
回転しながら、左手が、最後に脱がされる。
メリーゴーランドに乗っている気分。
最初は、あなたに向かい合っていた。
最後も、あなたに向かい合っている。
元に、戻る幸せ。
しかも。
脱ぐ前より、脱いだ時のほうが、あなたに近づいている。
あら。
私のハンドバッグは。
ハンドバッグを手に持っていると、なかなかコートを脱ぐのが、難しい。
私の手には、何も持っていなかった。
いつ、バッグが手から離れたのか、気づかなかった。
気がつくと、バッグが、手の中にあった。
マジック。
あなたは、私の手からバッグを、さり気なく受け取り、バッグを持ちながら、コートを脱がしてくれた。
そして、バッグを返してくれた。
あなたにコートを脱がしてもらうために、来年は、早めにコートを着始めよう。