#785 ものより、人を見ている。
あなたのおもちゃの見方が、好き。
あなたと、美術館に行った。
郷土玩具展。
懐かしいおもちゃが、たくさんあった。
初めて見るおもちゃも、あった。
こういうのを見る時のあなたは、子どもの目になる。
目だけでなく、全身が、子どもになっている。
本当は、いつも子どもだけど。
あなたのクリエイティビティーの原点は、子どもの頃のおもちゃにあったにちがいない。
あなたが、子どもの頃、おもちゃでどんなふうに遊んでいたかが、ありありと浮かんだ。
あなたは、大人になっても、それを続けている。
ひとつひとつのおもちゃにかける時間が、長い。
ひとつひとつで、遊んでいるから。
あなたの家に、友達が集まって、遊んでいたらしい。
いつものことが、起こった。
学芸員の人が、説明してくれた。
あまりに、あなたが楽しそうに見ていたからに、違いない。
その玩具を作った職人さんの話を聞かせてくれた。
「ひとつひとつ、違いますね」
あなたが、言った。
「そうなんです。型で作っても、同じようには、できないんです」
学芸員さんが、うれしそうに、説明してくれた。
私は、同じに見えていた。
思わず、触りたくなりますね。
離れた所で、触っている人がいた。
「あっ。触ってはいけないんですけどね。ちょっと、行ってきます」
学芸員さんは、注意に行った。
私は、おもちゃを見ていた。
「注意しないで、説明することで、触るのを止めた。さすが」
あなたは、言った。
あなたは、学芸員さんを見ていた。
私は、おもちゃを見ていた。
あなたは、やっぱり、人に興味がある。
それが、あなたの優しさ。
あなたの家に、友達がたくさん集まっている風景が、見えた。