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#794 スパイの多いレストラン。

あなたのスパイ力が好き。
あなたと、初めてのレストラン。
スカーレットと勝手に呼んでいる美人ウエイトレスの動きは、キビキビしている。
出される料理も、美味しい。
サービスも、素晴らしい。
あなたの取り分けも、いつのまにか、できている。
テーブルでサーブしてくれるメートル・ドテルのような、鮮やかさ。
座っていなかったら、お店のスタッフと間違えられる。
お魚の料理が、届いた。
もはや、迷いすぎて、自分が何のお魚を頼んだか、覚えていない。
あなたは、ふと、まわりを見渡した。
スカーレットに、アイコンタクトした。
スカーレットが、お魚のお皿を、微笑みながら、下げた。
置かれた料理は、頼んだ料理ではなかった。
私は、気づいていなかった。
不思議。
いつもなら、間違えられた料理が届いても、何も言わず、食べるのに。
今日は、違った。
頭の中で、プレイバックした。
お魚料理を届けてくれたポニーテイルのウエイトレスの子は、スカーレットではなかった。
あなたは、お皿の置き方で新人であることを見抜いた。
隣のテーブルが、そのお魚をオーダーしているのも、聴いていた。
だから、あなたは間違いに騒がずに、その料理を、いったん下げて、隣のテーブルに、気づかずに持っていける手配をした。
私は、自分のオーダーも、覚えていないのに。
あなたは、隣のテーブルのオーダーも、覚えている。
ウエイトレスの子が、新人であることも見抜いている。
スカーレットは、言葉を発していないのに、あなたの意図を、汲み取った。
スカーレットも、はやりスパイだった。
あの時、「料理が、間違ってるけど」と言うと、隣のテーブルには、持っていけない。
間違った料理を、そのまま食べていれば、隣のテーブルで「まだですか」ということになってしまう。
隣の席では、「わあ、美味しそう」と、歓声が上がっていた。
事なきを、得た。
あなたは、新人の子にも、優しかった。
届いたメカジキのタルタルソースは、美味しかった。



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