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#798 あなたの腕で、急傾斜の階段を。

あなたと急傾斜の階段を下りるのが好き。
あなたと、ファッションショー。
自粛で、ファッションショーは、久しぶり。
会場は、競技場。
久しぶりの開幕に、熱気を感じる。
全席、指定席。
アリーナに、下りていく。
階段は、思ったより、急。
階段というより、はしごに近い。
見やすいように、傾斜が大きく作られている。
あなたが、さっと、腕を出してくれる。
あなたの腕を味わえるので、急傾斜の階段が、好き。
競技場の会場には、クロークはなかった。
スプリングコートを、どうしようか、迷った。
結局、着てきた。
私のスプリングコートは、あなたの腕にかかっている。
あなたの腕にかけてもらえるように、着ていた。
この日は、暖かだったけど。
あなたの腕があるから、チャレンジングな高さのヒールが履ける。
急傾斜のスタジアムの階段が、今日の私のメインイベント。
私のランウェイ。
あなたの腕があれば、階段がなくても、下りていける。
ヒールの下に、階段がなくても、下りていける。
足元を見ないで、すいすい、歩くことができる。
フロントロウに座る。
あなたは、足を組む。
あなたの足の甲が、きれいな直線を描いている。
バレエダンサーの足の形。
あなたは、ステージのフィギュアの一部になる。
あなたの隣に座ると、それだけで、姿勢が良くなる。
膝から、つま先までが、軽々と浮き上がる。
頑張っていなくても、足が軽く感じる。
ショウを見ながら、思い浮かべていた。
帰りに。
また、あの急傾斜の階段を、あなたの腕で、上れることを。
競技場を設計した建築家に、感謝した。



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