#809 紳士が、紳士を育てる。
あなたの男の子への接し方が好き。
あなたと、ビュッフェ。
このお店は、ヘルシービュッフェなので、ママと子供の組み合わせが多い。
「ハンバーグ、まだかな」
男の子の声が聞こえた。
今日のメインは、ハンバーグ。
人気なので、すぐなくなってしまう。
厨房で、追加を作っている様子。
「ハンバーグ、出来上がりました」
スタッフの声が聞こえた時、あなたは、ちょうどハンバーグの台の前にいた。
あなたは、男の子を入れてあげるかなと、思った。
でも、しなかった。
男の子は、列の後ろに並んだ。
あなたは、あえて、列に入れなかった。
列に入れてあげると、男の子は、子どもになってしまう。
後ろに並ばせることで、男の子を紳士にすることができる。
あなたは、男の子を、紳士にした。
あなたなりの紳士教育だった。
紳士が、紳士を作った。
「いただきます」
男の子の、礼儀正しい声が聴こえた。
食べ終わった後も、
「ごちそうさまでした」
という礼儀正しい声が聞こえた。
「片付けなくて、いいのかな」
「そのままで、どうぞ」
お店の人が、笑顔で声をかけた。
言葉遣いに反して、男の子は、若かった。
この年齢の言葉遣いに思えない。
小さい頃のあなたを、思い浮かべた。
あなたは、小さい頃、こんな男の子だったに違いない。
あなたも、きっとハンバーグの台の前で、紳士に育てられた。
二人のあなたに、出会った。