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#817 さりげなく、拍手もなく。

あなたのさりげなさが好き。
あなたと、カフェのテラス。
建物の奥に、バーカウンターがあるから、バーかもしれない。
早い夕食をした後。
夏は、時間が錯覚する。
晩ごはんを食べた後なのに、明るい。
もう夜8時になろうとしているのに、ちょっと、明るい。
北欧に来た感じ。
この時間帯が、好き。
目線を変えるたびに、少しずつ、暗くなっていく。
舞台のセットのよう。
心地いい風が吹いている。
夏の夕方の風。
風に乗って。
音楽が、聴こえてきた。
風が、音楽を運んできてくれるのがいい。
まるで、ライブ演奏のよう。
ライブ演奏の音源かもしれない。
うっかり、拍手してしまいそうになる。
一曲が、終わった。
拍手は、なかった。
ライブ音源ではなかったか。
次の曲が、さりげなく、始まった。
さりげなさがいい。
テラス席にピッタリのBGM。
まるで、生演奏を聴いているみたい。
お店の奥を見た。
えっ?
二人組が、演奏しているのが、見えた。
生演奏のようなBGMではなかった。
「生演奏のBGM、のような生演奏」だった。
さりげなく始まるのがいい。
トークがないのが、いい。
拍手もないのが、いい。
月が、出た。
空が、ターコイズブルーから、マリンブルーに変わった。



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