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#821 お寺で、寝転がって。

あなたの寝転がり方が好き。
あなたと、京都のお寺。
特別公開中。
ふだんは、見ることができない。
入口を入ると、紫陽花の水色のお花。
実は、紫陽花ではなく、甘茶の花。
お茶の花が、こんなにきれいだったとは。
もっと、お茶の花も、宣伝すればいいのに。
いや、そこが、お茶の花の奥ゆかしい所かもしれない。
特別公開のお寺は、賑わっていた。
案内してくれるスタッフの人が、感じがいい。
お寺は、昔から、人々の心を癒やすサービス業だったことが、うかがえる。
お坊さんの感じが、いい。
あなたが入ると、案内される。
まるで、予約したホテルのよう。
案内してくれる人は、あなたのことは、知らないはず。
それでも、案内してもらえる。
それより前に。
案内してくれた人は、お坊さんだった。
特別公開とはいえ、お坊さんに案内してもらえるのが、京都。
しかも、禅寺。
お坊さんは、大勢の人に出会えってきているはず。
サービスマン以上に、人を見る目がある。
あなたに気づくのも、わかる。
気づかれるあなたも、さすが。
中には、凄い美術品が、所狭しと展示されていた。
美術館だったら、一品で個室を与えられそうな作品が、ぎゅうぎゅうに並んでいる。
お坊さん自ら、解説してくださる。
「それでは、次は、こちらへ」
案内してくれたお坊さんの姿を、見失った。
「どうぞ、寝転がってください」
お坊さんが、畳の上に、寝転がっていた。
あなたは、微笑んで、寝転がった。
私は、一瞬、ためらった。
お寺で、寝転がるなんて。
寝転がった。
変な角度に寝転がってしまった。
目の前に、天井に描かれた雲龍が現れた。
お寺の中で、あなたと寝転がって、龍を眺めているのが、楽しかった。



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