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#822 ふわりと、ひっくり返しされて。

あなたのひっくり返しが好き。
あなたと、京都のお寺。
特別公開で、賑わっている。
賑わっていた。
さっきまで。
気がつくと、さっと誰もがいなくなった。
女子校の修学旅行生が、次の見学場所に、移動していった。
急に静かになった。
中庭にも、紫陽花に似た甘茶の花が、咲いていた。
こんな満開な時は、今日だけであることを、忘れそうになる。
甘茶の花に、水が撒かれた。
その水に、太陽の光が当たり、虹が出た。
水を撒いているのは、お坊さんだった。
さっき「寝転がってください」と寝転がっていたお坊さん。
ちょうど水撒きの時間というわけではない。
私達のために、水を撒いて、虹を見せてくれた。
「どうぞ、お庭に、降りてください」
どこまで、サービス満点。
とこまで、特別公開。
あなたは、縁側に座った。
「どうぞ、縁側に、足をブラブラさせてください」
どこまで。
つっこみたくなる。
お坊さんの声の優しさが、ピラティスの先生のように、感じてきた。
「おまたせしました」
甘茶の花を眺める縁側に、お茶とお菓子が、運ばれてきた。
どういうこと。
そういえば。
さっき、あなたがスタッフの人に、何かを渡していた。
甘茶のお庭を見ながら、お茶とお菓子をいただける。
お寺の概念を、ひっくり返された。
そうか、ここは。
禅寺だった。
ふだんの先入観を、ふわりと、ひっくり返して、楽になる。
体験する禅だった。
それは、いつも、あなたにしてもらっていることだった。



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