#830 映画のような、日常。
あなたの映画のような日常が好き。
あなたと、新しくできた美術館。
企画展を見終わって、出てきた。
常設展を見ようと思ったら、展示替え中だった。
こんな時、どうするか。
すぐ隣にも、美術館がある。
あなたは、優しい。
「お茶に、しよう」
予定の時間が余ったからといって、もう一件、押し込むことで、段取り力を見せようとはしない。
ゆったりしたい、女の子の気持ちがわかっている。
館内のミュージアム・カフェを探す。
オープンしたてで、館内のミュージアム・カフェはまだ開業準備中だった。
「外に、なんかあったね」
あなたは、スパイのように、入る時から、情報を集めている。
建物の外の芝生の上に、特設の期間限定カフェが、オープンしている。
気持ちよさそう。
考えることは、みんな同じ。
混んでいる。
空いている椅子はない。
「とりあえず、飲み物を買おう」
アイス・レモンスカッシュ。
いいね。
私も。
お会計をする。
「席、見てくるね」
私は、ドリンクを待つ係。
あなたとだと、立って飲んでも、おいしい。
「できたよ」
えっ。
どうやって、席を確保したの。
またしても、007。
映画なら、「そんなにうまくいくわけないでしょ」と突っ込まれる所。
映画のウソを、あなたはリアルにしてしまう。
「僕が、持っていくから」
結局、トレイを運ぶのは、あなただった。
私は、席に座って、川からの風を感じながら、芝生の匂いを味わっていた。
あなたは、アイス・レモンスカッシュのトレイを持ってきた。
そこには、バスクチーズケーキも、乗っていた。
あなたの日常は、映画だった。
私も、映画の中に、入れてもらった。