» page top

#836 楊貴妃のように。

あなたの皮の剥き方が好き。
あなたと、ビュッフェ。
一番楽しみな時間が来た。
ビュッフェ。
この時間のために、食べたいメニューを、おかわりするのを、我慢していた。
最初から、メニューは決めていた。
それなのに。
やっぱり、気持ちが動いた。
動いた気持ちを、優先する。
あなたは。
あなたは、ケーキ類を取らずに、フルーツ。
盛り付けが、オシャレ。
日本橋の老舗のフルーツ店の盛り合わせのよう。
そのまま、ショーウインドウに並べられる。
アート作品のようなレイアウト。
ベリーソースで、ペインティングまでされている。
それに比べると、私のケーキとアイスクリームは、のせただけ。
盛り付けと、のせただけの差。
真ん中に、ライチーが乗っていた。
ライチーは、迷った。
キレイに皮を剥く自信がなかった。
ピュッと、飛ばしてしまいそう。
あなたは、あざやかに、剝いた。
いかにも、自然。
あなたは、みかんの皮を剥く時ですら、美しい。
ライチーは、輝いていた。
おいしそう。
あなたに剥かれたライチーが、幸せそうだった。
ライチーのヌード。
セクシーだった。
ロダンの彫刻の女性像のよう。
果物だけど、女性であることがわかる。
楊貴妃のお気に入り。
玄宗皇帝は、ライチーを手に入れるために、ライチーの生息する国を攻略した。
その気持ちも、わかる。
えっ。
あなたは、キレイにむいたライチーを、私のお皿に乗せた。
私は、楊貴妃になった。



【中谷先生のおすすめ電子書籍TOP3】 紹介記事はこちらからどうぞ