#841 禁じ手を、破って。
あなたの禁じ手破りが好き。
あなたと、ホテルの中華レストラン。
中に、初めて入った。
前から、気になっていた。
外から中が見えるお店も気になる。
中が、全く見えないお店も、気になる。
中に入ると、中華とは思えないスタイリッシュ感。
メニューを受け取る。
気になる料理が、ありすぎる。
「アラカルトで」
あなたは、頼んでくれた。
気になるメニューがありすぎて、コースでは収まらない私の気分を、察してくれた。
あなたは、アラカルトをオーダーした。
私は、前菜から、コース仕立てにすることを、予測していた。
気持ちよく、期待を裏切ってくれる。
「海鮮あんかけ焼きそば」
気になっていた。
「金華ハムととうもろこしと枝豆の炒飯」
それも、焼きそばと迷っていた。
麺ものとご飯ものの両方でいいの?
禁断の炭水化物重ね。
「それと、コラーゲン鶏煮込みつゆそば」
コラーゲン、いい。
えっ、焼きそばと、炒飯と、つゆそば。
炭水化物3段重ねなんて、いいの?
いいのね。
ふだん、食事には気をつけている。
節制ができるのは、あなたとの食事で、羽目をはずさせてくれるから。
ホームドクターには、絶対叱られる組み合わせも、あなたとの食事の時だけだったら、許してもらえる。
「とりあえず、そんな感じで」
すごい。
コースをまったく外した組み合わせ。
しかも、私が、気になっていたものばかり。
あなたは、定形よりも、私の気になるものを、優先してくれた。
普通だと、ウエイトレスさんにも「前菜は?」って聞かれそうだけど。
オーダーを取ってくれた女性が、幸せそうに微笑んだ。