#845 唇に、驚きを。
あなたのアミューズ・ブーシュが好き。
あなたと、ビュッフェ。
私が、サラダを取りに行ってる間に、あなたは、スープを持ってきてくれる。
もちろん、自分のサラダも。
私が、スープが気になっていたのに、気づいてくれた。
まず、あなたが持ってきてくれたスープから。
あら。
コーンスープの上に、何かがトッピングされている。
さっき、ビュッフェ台をのそいた時には、スープの所に、トッピングらしきものはなかった。
一口。
えっ。
スパイシー。
トッピングは、コーンを揚げたものだった。
カリカリの食感。
そこにスパイスがまぶしてある。
コーンスープの甘さを予感していた私は、心地いい裏切りにあった。
スパイスの辛さが、コーンスープの甘さを引き立てる。
カリカリの食感が、スープのとろみを引き立てる。
ギャップの組み合わせ。
しかも。
スープの底から、つぶつぶコーンが出てきた。
もしや。
このつぶつぶコーンは、サラダコーナーにあった。
カリカリコーンは、オードブルのコーナーにあった。
あなたにとってビュッフェ台は、出来上がった料理を取ってくるところではない。
あなたの料理を作り出す材料コーナー。
食事の最初に、驚かされた。
これは、もはや、ビュッフェじゃない。
フレンチのコース料理。
あなたのコーンスープは、アミューズ・ブーシュ。
ブーシュは、唇。
アミューズは、楽しませる。
私を驚かせる最初の一口。
ビュッフェの勝負は、最初のアミューズで決まる。
最初から驚かされる快感。