#847 ますます、あなたになる。
あなたのアクシデントが好き。
あなたが、こちらに向かっている。
新幹線の中から、メールが届く。
線状降水帯の集中豪雨で、のぞみの中で、待機中。
大変。
そう感じたのは、私だけだった。
ちがう。
あなたは、大変な時も、大変と感じない。
ちょっと、うれしかった。
あなたが、大変と感じていないことに、気づけたことが、うれしかった。
あなたは、離れた所で、新幹線に閉じ込められている。
いや、あなたは、閉じ込められているという意識はない。
のぞみちゃんの所に、立ち寄ってあげている感覚。
監禁ではなく、源氏の君が、姫の所に立ち寄った感じ。
ホントなら、今頃、一緒にベッドに入っているはず。
でも、ムッとしない。
あなたも、ハラハラしない。
私が、ムッとしたら、あなたを心配させてしまう。
あなたは、私が、ニコニコしていることに、気づいてくれる。
一緒にベッドの中にいるより、親近感を感じた。
不思議。
あなたは、のぞみちゃんのベッドにいる。
客室乗務員の女性は、対応でてんてこ舞いだろう。
そんな彼女たちに、あなたは、優しい笑顔で励ましているに違いない。
あなたと一緒だったら。
いや、違う。
一緒にいる。
こんなに、あなたを感じる。
アクシデントの時ほど、あなたを感じる。
あなたが、現れた時のことを、想像した。
あなたは、何事もなかったかのように、現れるだろう。
ジェームズ・ボンドは、大変という言葉を使わない。
大変は、日常だから。
夜が明けた。
ニュースで、運転再開予定は、12時ごろの見通しとのこと。
あなたは、いつも通りで、いつもよりテンション高く、私の中に、来てくれる。
ジェームズ・ボンドがモテる理由が、わかった。
アクシデントで、あなたは、ますます、あなたになる。