» page top

#853 気づいた、初めての人。

あなたの写真が好き。
京都のホテル。
あなたが、インスタを始めた。
フォロワー数を増やすのが、目的ではない。
ファンを増やすことでも、ビジネスのためでもない。
ただ、表現のひとつとして、している。
純粋。
インスタのために、写真を撮るのではない。
あなたが撮りためた写真の一部を、発表するだけ。
もともと、あなたの撮る写真は、みんなと違う。
みんなが撮る所で、あなたは撮らない。
「なんで、そんなところを」
という所を撮る。
ホテルの総支配人も、驚いていた。
「そんな所を、撮った人は、見たことがない」
みんなが大階段を撮っているのに、あなたは窓の外を撮っている。
そこに写っているのは、建物の軒でしかない。
あなたの写真を見せてもらった。
なにも、撮るものはないでしょ。
えっ?
こんな所に。
五重の塔が、写っていた。
京都のホテルとはいえ、そこら中に五重の塔が建っているわけではない。
ハリウッド映画じゃないから。
最も近くの五重の塔でも、もっと遠いはず。
でも、たしかに、あなたの写真では、窓の外に五重の塔が建っていた。
よく見ると。
それは、やはりホテルの軒だった。
ホテルの軒を、この窓から切り取ると、五重の塔に見える。
建築家は、きっとそれを狙っていた。
この窓の目的は、採光のためだけではなかった。
採光のふりをして、そこにはない五重の塔を、イリュージョンで見せた。
建築家の意図は、マニアックなので、全員には気づかれない。
むしろ、建築家の趣向は、気づかれないために、その横にオトリとしての大階段をつくり、意識をそらさせている。
建築家の隠れた趣向に、あなたは気づいた。
きっと、建築家はあなたの来館を、待ち望んでいたに違いない。



【中谷先生のおすすめ電子書籍TOP3】 紹介記事はこちらからどうぞ