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#855 カッコいい、脇役。

あなたの脇役の演技が好き。
あなたと、ランチ。
2つ星フレンチレストラン。
ランチは、12時から。
お店の前に、5分前に着いた。
ちょうど、あなたも、到着。
いつもの、ニコニコの笑顔。
それだけで、満腹。
他のカップルも、お店の前で、12時開店を待っている。
あなたは、迷わず、中に入っていく。
まだ、12時になっていないけど。
そんな時。
あなたは、「もう、入れますか」
とは、聞かない。
「揃ってますから、いつでも、声をかけてください」
言い方が、優しい。
「どうぞ」
と案内された。
私が、入り口で、体温検査と消毒をしている間に。
あなたは、もう入り口のペストリーコーナーのスタッフと、話している。
並んでいる美味しそうなケーキを見ているだけではない。
ケーキ係のスタッフの女性と話している。
テーブル席に案内される。
長い、カウンターのお店。
フレンチレストランというよりは、お寿司屋さん。
シェフがお寿司屋さんにインスパイアされて生まれたお店。
私達の直ぐ側のカウンターに、さっき入り口で、真面目に待っていたカップルが、座った。
その二人に、ハロウィンのアニバーサリープレートが、カウンター越しに、お寿司の要領で出された。
彼は、頑張った。
彼女は、喜んでいる。
おしゃれなデコレーション・プレート。
そのプレートを、カウンターのスタッフの女性が、裏返した。
あらっ?
私は、二人を覗き込んだ。
私達のテーブルで、あなたと話していたソムリエが、話の途中で、さっといなくなった。
あっ、記念撮影だ。
まずい。
思わず、首をすくめた。
あなたは、さり気なく、窓の外を見た。
写真に入らないように、しかもカッコいいお店のゲストを演じていた。
やられた。



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