#868 心の中の、呼び方で。
あなたの、呼び方が好き。
あなたと初めて、会った時。
あなたは、しばらく名前を聞かなかった。
だからといって、冷たい感じでもなかった。
名前は、もう知ってるのかと思った。
知っているわけではなかった。
それでも、いっぱい、お話をした。
会ってすぐ、ニックネームで、親しげに呼ぶ人もいる。
あなたは、そうではなかった。
名前を聞かないで、お喋り。
初めて話すのに。
凄い、物語を話してくれた。
映画を見ているみたいだった。
初対面で、こんな壮大な物語が、共有できるなんて。
驚いた。
今でも。
あなたの話は、物語。
喋るのではない。
語っている。
ワンウェイではない。
私を一緒に、物語の世界に、連れて行ってくれる。
日常会話も、できないわけでもない。
礼儀正しい言葉も知ってる。
ただし、特別な人には。
物語の世界に、いざなってくれる。
まるで、ダンスに誘うみたいに。
言葉のダンス。
ダンスを誘うのに、名前は要らない。
名前を聞くのは、一夜、明けてからでいい。
それが、源氏物語っぽくていい。
そう。
源氏物語みたいに、私の名前は、あなたにつけてほしい。
名前を聞かないのは、あなたがもう名前をつけているから。
心の中で、呼んでくれているから。