#874 体の会話を、して。
あなたの体の会話が好き。
あなたの講演会。
始まる前から、熱気が伝わってきた。
音楽が、響いている。
クラブと、間違えるかもしれない。
熱気は、音楽からではなく、集まった人たちからだった。
集まった人が、始まる前から、興奮している。
生の講演の凄さ。
話を聞く前から、笑っている。
目が輝いている。
予定時間より早く、集まっているのが、わかる。
そしてあなたは。
予定時間より、早く、始める。
講師自ら、前説。
集まった人は、大喜び。
MCの女性が、慌てて、紹介を始める。
あなたは、MCの女性も、盛り上げる。
あなたの話を聞く、みんなの目線が熱い。
マスクをしていても、笑っているのが、わかる。
同時に、真剣であることもわかる。
講演会の後、写真を撮って下さいと、一人の女性が現れた。
あなたは、快く受け入れて、彼女の後ろに立ち、包み込んだ。
「あらっ?」
あなたが、小さくつぶやいた。
「アスリートだね」
あなたは、言った。
「はい」
彼女は、応えた。
包み込んだだけで、あなたは、彼女がアスリートであることに気づいた。
あなたは、握手の手を差し出した。
「えっ?」
今度は、彼女が、小さくつぶやいた。
「軽い」
彼女は、アスリート。
体で、会話ができる。
彼女は、あなたの握手を通して、あなたの体の動きを感じた。
そして、あなたの体を、しばらく味わっていた。
握手を通して。