#877 パンのエクスタシー。
あなたのパンのほめ方が好き。
あなたと、フレンチレストラン。
パンが、おいしい。
危ない。
パンが、なくなってしまう。
そんな時、あなたは、パンをおかわりしてくれる。
頼み方も、優しい。
ウエイトレスの女の子が、ニコニコしている。
最初、パンを置く時に、私は
「おいしそう」
と言った。
あなたは、言った。
「パンの置き方が、優しいね」
その瞬間、ウエイトレスの彼女の頬が、赤くなった。
彼女だけではなかった。
パンが、赤くなった気がする。
お皿も、赤くなった。
テーブルが、まるで、ベッドになってしまった。
その彼女に、パンのおかわりをしてくれた。
彼女は、おかわりが、嬉しそうだった。
今度は、さっきより、さらに丁寧に置いた。
彼女は、これから、いい人生を歩むに違いない。
パンのおいしさをほめてくれる人は、大勢いる。
パンの置き方をほめてくれる人は、あなたが初めて。
あらゆる仕草をする時に、彼女は、あなたのことばを思い出すだろう。
たぶん、自宅に帰った時も。
あなたは、彼女の人生を変えてしまった。
きっと、付き合う人も、変わった。
テーブルは、ベッドと同じ。
誰と、テーブルをともにするかで、人生が変わる。
誰と、ベッドをともにするかでも、人生が変わる。
パンのエクスタシー。