#878 パンで、愛撫。
あなたのパンでのソースの拭き方が好き。
あなたと、フレンチレストラン。
メインのお料理が出た。
盛り付けが、おしゃれ。
「カンディンスキーだね」
あなたが、言った。
確かに。
普通、まるく盛り付けるレイアウトが、クロスする形になっている。
黄色・緑・赤の配色。
あなたと展覧会で見たカンディンスキー。
ミロにも、見てる。
そう。
ミロの展覧会も、あなたと行った。
レストランに来ているのか、美術館に来ているのか、わからなくなった。
あらっ。
あなたが、何か、不思議な仕草をした。
テーブルの上で、ダンスを踊った。
あなたの指が。
あなたは、残ったソースを、パンで拭った。
ゴシゴシではない。
くるりと回転した。
パンに触れているのは、あなたの中指。
その指を、手を動かさずに、時計の7時から5時まで、反時計回りに回転した。
スカートの広がりを感じた。
しかも。
あなたのパンは、お皿に押し付けられていない。
ソースに触れるか、ひょっとしたら、触れないかくらいの距離。
それでいて。
見事に、ソースが、あなたのパンに吸い込まれた。
お皿が、ため息をついた。
これは、もう。
愛撫でしょ。
周りに人がいる所でしていいの。
背中に、快感の鳥肌が立つのを感じた。