#885 楽器のような、キス。
あなたの心地いい声が好き。
あなたと、ベッドの中。
ふわふわの腕枕の中で、あなたの声を味わっていた。
今日、あなたと、コンサートに行った。
クラシック。
今、気がついた。
あなたの声は、楽器。
なんで、あなたの声は、心地いいのか、謎だった。
声ではなく、音楽だったから。
言葉ではなく、メロディーだった。
なんの楽器だろう。
今日のコンサートを、思い出してみた。
暖かさは、木管。
気高さは、金管。
優しさは、弦。
たくましさは、打楽器。
どれだろう。
全部ある。
あなたの声は、オーケストラになっている。
話の中身で、使い分ける。
小節ごとにも、使い分ける。
ソロの部分もあれば、合奏のところもある。
だから、心地いい。
そういえば、あなたは、すべての楽器を、味わっていた。
一つ一つの楽器を、細かく分けて、味わっていた。
あなたの頭の中の映像では、それぞれの楽器のアップが、カット割りでクローズアップになっていた。
それらがすべて、あなたの声のライブラリーになっている。
あなたの声は、いつも違う。
同じ楽譜を、違うコンダクターが演奏すると違うように。
あなたは、あなたという楽器を奏でるマエストロになっている。
そして。
あなたのキスも、毎回、違う楽器。