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#886 天上人の、声で。

あなたの和歌の詠み方が好き。
あなたが、百人一首を読んでくれる。
高校時代、私も、百人一首が、好きだった。
だめだ。
思い出せない。
似ている歌が、混ざってしまう。
上の句と下の句が、違った組み合わせになってしまう。
かるたとりも、していたのに。
暗記したのに。
私が、思い出せない歌を、思い出そうとしていた。
上の5文字が、思い出せない。
その歌を。
あなたが、上の句の5文字を、読んでくれた。
そうそう。
これこれ。
えっ。
違う。
確かに、この歌なのに。
まったく、違う。
あなたの詠み方が、ちがう。
私のは、読んでいる。
あなたのは、歌っている。
私のは、暗記している。
あなたのは、天から、聴こえてくる。
そう、天から。
聴こえてくるというより、降り注いでくれる。
この世の音ではない。
雅楽に、聴こえた。
大聖堂に響く教会音楽のようにも聴こえた。
高い。
それでいて、優しい。
平安時代の貴族は、この音色で話していたに、違いない。
三十一文字を、ノンブレスで、歌い上げた。
しかも、歌い終わった後、歌は、再び天上へ舞い上がっていった。



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