#888 2周目は、違う味。
あなたの前菜の食べ方が好き。
あなたと、ランチ。
美術館と、コラボメニュー。
献立のメニューから、謎。
具体的には、何も書かれていない。
「<謎のスープ>って」
最初に、前菜が運ばれてきた。
ここから、謎。
真ん中に、バラの花。
よく見ると、サーモン。
その周りに、6つの前菜が並んでいる。
ウエイターさんは、ニヤニヤ笑うだけで、いつものようには、説明してくれない。
見たことがないような、色が並んでいる。
まるで、パレット。
どこから食べようかしら。
「どれが、気になる」
あなたは、聞いてくれる。
8時の所にある水色のものが、さっきから気になっている。
「じゃあ、一緒に食べよう」
そういう所が、優しくて好き。
半分に切って、口に入れる。
なんと。
蕪のお漬物。
おいしい。
フレンチのコースなのに。
意表を、突かれた。
アミューズ・ブーシュになった。
「次は……」
あなたを、見た。
しまった。
あなたは、水色の蕪を半分残している。
2周する作戦だった。
私は、半分に切ったのに、おいしくて、全部食べてしまった。
2周目。
あなたは、2分の1の水色の蕪を、さらに半分にカットして、私のお皿に乗せてくれた。
食べると、一周した後なので、さっきと全く違う味がした。
これが、2周して、楽しむ意味。
前菜で、すでにフルコースを味わった気分。
「時計だね」
パレットに見えたお皿が、時計に見えてきた。
キスも、1回目と、2回目で、違う味になる。