#893 4楽章の交響曲のように。
あなたの牛丼の食べ方が好き。
あなたと、ホテルの和食レストラン。
今日のお目当ては、牛丼。
ホテルで、牛丼という贅沢。
牛からして、ブランド牛。
温泉卵が、乗っている。
紅生姜も、嬉しい。
牛丼の約束を守りながら、さすが一流ホテルの牛丼になっている。
いつも食べているものだけに、高級感の違いが、わかる。
量も、たっぷり載っている。
器も、高台が高く、立派。
あなたは、大きな丼をキレイに持っている。
あなたの丼は、浮いている。
親指が、真っすぐ伸びている。
そして、指先が、お椀の縁から外されている。
体幹の力がないと、マネができない。
それにしても、美味しい。
今まで、自分はタレで牛丼を味わっていたことを、思い知らされた。
今日は、素材の味を感じることができた。
お肉も、シャキシャキの玉ねぎも、お米も、美味しい。
一気に、食べてしまった。
あっ。
やってしまった。
あなたは、まず4分の1を、混ぜずに食べ始めた。
これは、お茶会で、和菓子を食べる作法。
次の4分の1は、温泉卵を混ぜて。
そして、次の4分の1は、紅しょうがを混ぜて。
最後の4分の1は、温泉卵と紅生姜を混ぜて、クライマックス。
温泉卵を、半分残していた。
しかも、4楽章の合間には、お口直しの香の物と、赤だしを挟んで、リセットしている。
あなたの牛丼は、まるで4楽章の交響曲。
同じおいしい牛丼を食べたのに、全く違う。
あなたの牛丼を、見せてもらうことで、味あわせてもらった。