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#894 帰り道が、本番。

あなたの食後のぶらぶらが好き。
あなたと、ホテルの和食店で、4楽章の牛丼を味わった後。
一気に食べてしまった私は、あなたが味わっているのを、味わっただけだけど。
お見送り口で、スタッフの人と会話を楽しむ。
あなたは、まだ、コートを腕に掛けている。
あなたのコートの腕の掛け方が、好き。
それだけで、紳士。
お店の中で、コートを着る男性を見ると、連れの女性が、気の毒になる。
ベッドでも、すぐ服を着るタイプなんだろうなと、感じてしまう。
あなたは、すぐコートを着ない。
それだけで、まだ、帰るのではないという安心感に包まれる。
まだ、続いている。
ホテルの廊下を、歩く。
あなたが、不思議な歩き方を、した。
ふと見ると。
ふかふかのカーペットに、石の延段の模様が、織り込まれていた。
気づかなった。
うつむいて歩いていることが多いのに。
あなたは、天上も、空も、絨毯も、全部見ている。
あなたの目には、世界全体が写っている。
見ているのではない。
感じている。
あなたが、一軒のテナントに入る。
「おかえりなさい」
と、お店のスタッフの方が、出迎えた。
「おかえりなさい?」
そこは、有名な陶芸家のギャラリー。
「牛丼、いかがでした」
そうか。
あなたは、和食店に入る前に、ここに立ち寄っていた。
そして、食後に私を案内してくれた。
なんという準備。
スタッフの人が、引き出しをスライドして、全ての作品を見せてくれた。
買うことができるお店。
茶碗だけでなく、コーヒーカップもあった。
ひとつのカップが気になった。
あなたは、お店の人に、アイコンタクト。
今、そのコーヒーカップは、我が家にある。
2個セットで、並んでいる。



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