#896 マンガの中から、あなたを呼ぶ。
あなたのマンガの話が好き。
あなたと、マンガミュージアム。
元の建物は、小学校。
そこをマンガミュージアムとして、再利用している。
廊下や講堂の壁一面に、マンガ。
懐かしいマンガがいっぱいある。
学校とマンガという相反する組み合わせが、楽しい。
隣のカップルの男性が、「これは、どんな話かというとね」
とあらすじを語っている。
女の子は、退屈していた。
話したいのは、あらすじではなかった。
あなたは、あらすじを、話さない。
このマンガを読んだ時の、あなたの思い出。
あなたは、高校3年生の時、音大志望クラスにいた。
音大志望くらいなので、女性が2倍。
教室では、女の子の中で、少女漫画が回覧していた。
男子は、その回覧の中に入っていなかった。
唯一、あなただけが、その回覧の中に入っていた。
違和感がない。
高校の時から、あなたは、あなただった。
女の子たちは、あなたを回覧の中に入れて、あなたと一緒にマンガを読みたかったにちがいない。
その気持ちがわかる。
「その時、読んでたマンガが、これ」
そういう話が、楽しい。
ページを開いた。
「えっ」
登場人物の男の子の名前。
そこには、あなたのペンネームが。
女の子たちが、あなたを、その名前で呼んでいるところが、目に浮かんだ。
あなたは、女子から、男性主人公の名前で、呼ばれていた、にちがいない。
そして、その名前を、ペンネームにした。
校庭には、人工芝が敷かれていた。
その芝の上に、そのマンガを持っていって、あなたと寝転んだ。
マンガの中から、あなたを呼ぶ声がした。