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#902 感動のラストシーンのように。

あなたの感情移入が好き。
あなたと、ファッションショー。
おしゃれな空間演出。
その後、デザイナーさんにご挨拶。
サインボードの前で、デザイナーさんと記念撮影。
大勢のセレブリティーが記念撮影するので、なかなか時間がかかる。
ショーの後、あなたはホテルのレストランを予約してくれていた。
レストランのラストオーダーは、早めだった。
来賓が多く、時間がギリギリになった。
タクシーを拾って、ホテルについた。
ギリギリセーフ。
「あっ」
あなたが、小さくつぶやいた。
「帽子を、忘れた」
タクシーの中。
こんな時でも、あなたは笑っている。
反省した。
あなたに、私のコートと引き出物を預けたままにしていた。
あなたは、自分のコートと引き出物、私のコートと引き出物を持って、支払いをして、ラストオーダーに向かっていた。
帽子が、犠牲になった。
すぐ、タクシー会社に電話をした。
営業時間外のアナウンスが流れた。
「きっと、大丈夫。後から乗った人が、感じのいい家族連れだったから」
あの急いでいる状況でも、あなたは007だった。
後から乗る人を、見ていた。
「ごめん、ごめん」
あなたは、謝っていた。
帽子に、謝っていた。
「かならず、迎えにいくからね」
あなたは、帽子の側の気持ちになっていた。
きっと、大丈夫。
帽子は、あなたが迎えに来てくれるのを、信じているから。
私も、帽子の気持ちになっていた。
翌日、帽子は、見つかった。
あなたは、即、帽子をメンテナンスに出しに行った。
パニック映画のラストシーンで、救急車に運び込まれる感動のラストシーンのようだった。



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