» page top

#906 3人同時の、「優しい」。

あなたの優しさの想像が好き。
あなたと、新幹線。
車内に入ると、一気に、涼しかった。
この時期。
クーラーが、難しい。
毎日の温度差が激しい。
朝晩の温度差も、激しい。
あなたは、ブランケットを、2つ取ってくれた。
車内の温度を素早く感じ取って、ブランケットを取ってくれる仕草が、007。
バッグとお弁当も、持っているのに。
席に座る。
グリーン車は、ほぼ満席だった。
私を、窓際に。
私の荷物を、上げながら、
「荷物、上げましょう」
あなたが声をかけたのは、あなたの前の通路側の席の女性だった。
「上げましょうか」
ではなく、もう、次の瞬間、上げていた。
その動きが、まさに、ダンス。
しかも、さりげない。
早速、楽しみのお弁当。
あなたは、ビニールを開いて、ブランケットを私の足元に掛けてくれた。
温かい。
ナプキン代わりにもなる。
お弁当を食べ終わると、グッドタイミングで、女性の車掌さんが食べ終わりの回収に来てくれた。
「すいません。ブランケット、ありますか」
と、あなたの前の女性が、車掌さんに聞いた。
寒くなってきたに違いない。
「あっ、もう全部出ちゃってるみたいです」
女性の車掌さんが、申し訳無さそうに謝った。
その瞬間。
「どうぞ、使って下さい」
あなたは、女性の車掌さんに、自分用に持ってきていたブランケットを差し出した。
「ビニール、まだ開いてないので」
あなたは、こういう事態を想定して、ビニールを開いていなかった。
「優しい」
女性車掌さんと、前の席の女性が、同時にあなたに言った。
その声に、私の声も、混じっていた。



【中谷先生のおすすめ電子書籍TOP3】 紹介記事はこちらからどうぞ