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#914 まるで、アシスタントのように。

あなたの説明の聞き方が好き。
あなたと、国宝のお寺に。
小学校の教科書にも載っているお寺なのに、来るのは初めて。
駅から、あなたは最短コースを歩かない。
それだけで、私は、嬉しくなってしまう。
きっと、私の喜びそうなコース。
そこは、参道になっていて、美味しそうなお店が、並んでいた。
「抹茶カツカレー」が気になった。
茶色なの、緑なの。
まずは、お参りしてから。
入館の所で、またしても、あなたは感じがいい。
ここでは、名前を名乗っていない。
それでも、一瞬で、チケット売り場の女性の対応が、変わった。
お堂の中は、またもう一度、チケットを買う。
そのチケット売り場でも、感じがいい。
入れ替え制なので、入れるのは、10分後。
まだ、誰も並んでいなかった。
あなたは、一番に並んだ。
その並び方が、綺麗だった。
並んでいるのか、並んでいないのかわからない人も多い。
あなたは、並び方のお手本のように、並んだ。
学芸員さんの注意事項の説明があった。
並んでいる他の人は、スマホを見たり、喋ったりして、聞いていない。
そんな中で、あなたは真剣に、注意事項を聞いていた。
いつのまにか、学芸員さんと、あなたの二人の世界ができあがっていた。
いよいよ、中へ。
本堂に入るのに、橋を二つ渡る。
「段差がありますので、お気をつけください。大丈夫かあ」
学芸員さんが、「すいませんね」という感じでアドリブを挟んだ。
「あっ、よくつまずくんですよ」
あなたは、きちんとアドリブを拾った。
正面から、お堂の中に入る。
教科書で見た、阿弥陀如来様。
「どうぞ、奥へお詰めください」
本当は、真正面が一番見やすいのに、あなたは指示された一番右奥に詰めた。
学芸員さんが、説明を始めた。
説明も見事だったけど、説明を音楽のように味わうあなたも、一体化していた。
説明が終わり、本堂から出るのが、私達が最後になった。
学芸員さんが言った。
「別の照明にすると、見え方が全く変わるんです」
あなたへのスペシャルサービスだった。
帰りがけ。
受付の小屋の中から「ありがとうございました」と声をかけてもらった。
先程の学芸員さんだった。
あなたが、先にアイコンタクトをしていたに違いない。



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