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#917 探偵のように。

あなたの絵の推理が好き。
あなたと、展覧会。
テーマは、愛。
あなたと、愛をテーマの展覧会に行けるのが、楽しい。
会場は、混んでいた。
ふだん、展覧会で見かけない若いカップルが、大勢いた。
賑わっているのが、私には、嬉しかった。
あなたと、絵の話をしていても、学芸員さんに叱られないから。
あなたは、タイトルを見ない。
解説も、読まない。
混んでいるのは、タイトルの前。
絵の前は、意外に空いている。
不思議。
あなたは、空いている絵を選んで見ている。
おや、そうではない。
あなたが、前に立つと、見ていた人が、さっと開けてくれる。
あなたが、分け入っているわけではない。
人垣ができている有名な作品の前では、あなたは、人の後ろから見ている。
みんなが前に寄る絵ほど、あなたは後ろから見ている。
ブランコの絵があった。
有名なフラゴナールの絵とは、べつのブランコの絵だった。
ブランコに乗る女性を挟んで、背中から押す男性と、スカートがたなびく前にいる男性。
どっちが夫で、どっちが愛人か。
ロココの時代は、結婚するまで、恋愛は禁止。
恋愛ができるのは、結婚してから。
しかも、男性だけではなく、女性も恋愛していい。
コンプライアンスを気にする現代よりも、はるかに進んでいる。
押している男性がご主人で、スカートを覗いているのが、愛人だと思った。
「たしかに」
それからしばらく、あなたは見ていた。
「押しているほうが、愛人かもしれない」
ブランコの女性は、押している男性に、振り返ってる。
前にいる男性は、警備の犬を連れている。
最初に見た時と、逆になるのが、推理ものを見ているようで、面白い。
私の心は、ブランコにのって、ワクワクしていた。



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