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#920 顔に、火照りを感じて。

あなたの暖炉の観方が好き。
あなたと、英国アンティーク博物館。
暖炉があった。
暖炉の前に、1組のウィングチェア。
あなたは、小さく驚いた。
そして、しげしげと眺めた。
あらっ。
あなたが、驚かないと、気づかなかった。
向きが、不思議。
椅子が、暖炉に向かっていない。
暖炉に背を向けるように並んでいる。
そうか。
暖炉は、顔を温めるものではなかった。
あなたは、映像を思い浮かべている。
私は、あなたが思い浮かべている映像を、思い浮かべる。
暖炉の火が、パチパチ燃えている。
こんなに、熱風が来るとは思わなかった。
頬が、熱い。
時折、火花さえ、飛んでくる。
火傷しそう。
暖炉の熱は、それほど、強力だった。
だから。
ウイングバック・チェアの羽根は、暖炉からの熱風と火花避けだった。
だから、暖炉に背を向ける形で置かれている。
2つの椅子の肘の形も、違っていた。
私は、肘掛けの小さい方の椅子に、座っている自分を思い浮かべた。
ヒップの大きいクリムノンドレス。
そうすると、肘掛けの小ささが、座りやすかった。
あなたは、肘掛けの上に、グラスを乗せることができた。
実用の美だった。
あなたは、モノを見ているわけではない。
モノを通して、そこで今まさに、暮らしている人を見ている。
暖炉を背にして、あなたと語り合う姿が、浮かび上がった。
顔に、火照りを感じていた。



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